マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

明治政府は進歩的であろうとしすぎた

 ――大政奉還の頃、徳川慶喜に政権を任せていたら、後年の明治政府に生じた“軍事の裁量権の独立”は生じなかった可能性がある。

 ということを――

 きのうの『道草日記』で述べました。

 

 結局のところ――

 僕が12月31日の『道草日記』でいい始めた、

 ――明治政府の異様

 というのは、

 ――軍事の裁量権の独立

 に結実をしているといえます。

 

 明治政府が日本の近代化に果たした役割は真に大きく、また、その功績も実に大きかったのですが――

 それら事実が全て色あせかねないほど“異様”な瑕疵を、明治政府の政体――政治の体制――が含んでいて――

 そのことを――

 僕は、どうしても見すごす気になれないのですね。

 

 その“異様”な瑕疵は――

 12月28日の『道草日記』で述べた通り、

 ――きわめて初歩的

 であったといわざるをえません。

 

(なんで、こんな初歩的なことで?)

 と、思わず苛立ってしまうくらいに――

 それは基本中の基本の過ちでした。

 

 なぜ、こんなことになってしまったのか――

 

 ……

 

 ……

 

 おそらく、

 ――明治政府が、あまりにも進歩的であろうとしたから――

 でしょう。

 

 日本列島の人々が、西欧列強の外交圧力に半ば屈する形で、

 ――明治維新

 という名の変革を遂げた後――

 明治政府は、わずか半世紀ほどの間に富国強兵・殖産興業を成し遂げ――

 第一次世界大戦では戦勝国の一員となり、大正期が終わる頃までには西欧列強に伍しうる国力――完全に伍しているわけではなかったにせよ――を備えていました。

 

 この発展は――

 世界の近現代史の常識に照らせば、

 ――離れ業

 といえます。

 

 この“離れ業”が可能であったのは――

 明治政府が常に進歩的であろうと努めたからに、ほかなりません。

 

 が――

 

 おそらくは――

 進歩的であろうとしすぎたのですね。

 

 進歩的であろうとしすぎて――

 うっかり初歩的な失敗をしてしまった――

 

 政体に隠れていた初歩的な瑕疵――「軍事の裁量権の独立」という瑕疵――を取り除き損ねるという初歩的な失敗をしてしまった――

 

 そこに感じられるのは――

 あえて卑近な喩えを持ちだせば――

 さながら、

 ――未熟な受験生

 にみられる悲哀です。

 

 ――応用に拘泥をするあまり、基本から逸脱をしてしまった受験生

 の滑稽といってもよいでしょう。

 

 このことを思うとき――

 僕は暗澹たる気持ちになります。

 

 明治政府の功績が目覚ましい分――

 余計に暗く、重い気持ちになってしまうのです。