マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

日本語の「クーデター」を考える

 日本語の「クーデター」という言葉について――

 ちょっと考えてみたくなりました。

 

 以下に――

 僕の考えを記します。

 

 ――クーデター

 という日本語は、「coup d'État」というフランス語に由来をしています。

 

 しばしば、「coup d'État」の直訳として、

 ――国家への一撃

 が挙げられます。

 

 ここでいう「国家」とは「État」の直訳で、「一撃」とは「coup」の直訳です。

 また、「国家への一撃」の「……への……」の部分は、「coup d'État」の「d’」の部分を受けています。

 

 僕は、フランス語については、ほとんど何も知らないのですが――

 それでも、あえて説明を試みますと――

 この「coup d'État」の「d'」の部分は、フランス語の前置詞「de」の語尾音省略形と呼ばれているものだそうです。

 

 フランス語では、「de」が母音で始まる名詞や無音の「h」で始まる名詞の前に置かれるときには――

 それら母音や無音の「h」に「de」が結合をし、「d'」と変形をするのだそうです。

 

 ところが――

 フランス語の前置詞「de」は英語の前置詞「of」と似た働きをしています。

 

 よって――

 本来ならば、「coup d'État」の直訳は、

 ――国家への一撃

 ではなく、

 ――国家の一撃

 と、なるはずです。

 

 が――

 それでは、日本語の「クーデター」の意味と少しズレてしまいますので、

 ――国家への一撃

 と直訳をされるようです。

 

 ……

 

 ……

 

 僕は、

 (そもそも、日本語の「一撃」をフランス語の「coup」にあてること自体が、おかしいんじゃないか)

 と思っています。

 

 フランス語の「coup」には、実に様々な意味があるそうです。

 

 それら意味のうち、

 ――すばやい動き、変化

 というものがあって――

 それこそが、「coup d'État」の「coup」ではないか――

 そう考えています。

 

 ちなみに――

 この「すばやい動き、変化」という意味での「coup」に対し、適切な日本語をあてるとしたら、どんな言葉がよいでしょうか。

 

 僕は、

 ――変

 が最も適切であると感じます。

 

 ――変

 というのは――

 1月27日の『道草日記』で触れた、

 ――乙巳(いっし)の変

 の「変」です。

 

 つまり――

 フランス語の「coup d'État」に日本語をあてるとしたら、

 ――国家の変

 が、よいのではないか――

 

 そういうことです。

 

 というよりも――

 

 日本語で、

 ――変

 といえば――

 ふつうは国家の「変」をさします。

 

 なので――

 実は、「coup d'État」の訳語は、

 (「変」一字で十分なんじゃないか)

 と――

 そう思っています。