紀元2世紀ギリシャ・ローマの医師・医学者アエリウス・ガレノス(Aelius Galenus)や、16世紀のブリュッセル生まれの医師・解剖学者アンドレアス・ヴェサリウス(Andreas Vesalisu)の話を――
きのうまでの『道草日記』で、延々と続けてきたのは――
17世紀序盤に活動をしたイギリスの医師・生理学者ウィリアム・ハーヴィー(William Harvey)によってもたらされた、
――「血液循環」説の確立
が、
――パラダイム・シフト(paradigm shift)
とみなせるかどうかに答えを出すためです。
結論からいえば――
10月10日の『道草日記』で述べた通り――
僕は、
――「血液循環」説の確立
は、
――パラダイム・シフト
とみなせると、考えています。
その理由は――
このパラダイム・シフトをもたらしたブレイクスルー(breakthrough)が、かなり明確に特定をされうるからです。
そのブレイクスルーとは何か――
……
……
僕は、
――人体解剖図版集『ファブリカ(fabrica)』
であると考えています。
より正確には、
――人体解剖図版集『ファブリカ』の出版
です。
なぜ『ファブリカ』が出版をされえたのか――
……
……
第一に必要であったのは――
ヴェサリウスの人体解剖に対する並々ならぬ意欲および人体解剖の確かな技量でした。
が――
それらだけでは『ファブリカ』は出版に至らなかったでしょう。
第二に必要であったのは――
ヴェサリウスの人体解剖がもたらした知見を、革新的に詳しくて正しくて、しかも圧倒的に美しい絵画にまとめあげ、それら絵画を、原画に忠実かつ一時に大量に刷り上げることによって、大勢の人々の目に触れさせる技術――美術画の印刷の技術――です。
つまり、
――「血液循環」説の確立
というパラダイム・シフトは、
――美術画の印刷の技術
というブレイクスルーによってもたらされた、と――
僕は考えています。