マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

政治の流血を避けるために

 先頃の国民投票の結果――
 欧州連合からの離脱が決まったイギリスで――

 離脱が決まってから――
 ネット上で、

 ――欧州連合とは何か。

 といった語句の検索頻度が急上昇したのだそうです。

 ――え? 今さら?

 と、国の内外で失笑を買ったことは――
 想像に難くありません。

 なぜ、こんなことになったのか――

 おそらく、

 ――とくに政治に関心を持たなくても、安泰に暮らしていくことができる。

 もしくは、

 ――争いに関わりたくないのなら、政治に関心を持たないのが一番だ。

 との誤解が――
 民主主義の先駆けともいえる、かの国においても――
 すっかり蔓延していたからでしょう。

 ふた昔ほど前――
 ある政治学者が、講演やテレビ出演の度に、

 ――政治は皆さん一人ひとりに関わる営みなんです。皆さんの生活に密着した営みなんです。

 と判で押したように何回も同様のコメントを繰り返していたのを思い出します。

 当時は、
(いつも同じことをいってるな~)
 と、半ば呆れ気味に思っていたのですが――

 そんなことはなかったのですね。

 そのコメントは――
 僕ら一人ひとりが安泰に暮らしていくためには――
 いくら強調をしても、したりないほどの重要な警句でした。

     *

 政治とは何か――

 様々な答えがあるようです。

 が――
 僕は、

 ――政治とは、社会の利害調整である。

 と考えています。

 社会の利益をどのように分配するか――
 社会の損害をどのように分散するか――
 それを決めていくのが、政治です。

 そして――
 その利害調整の主導役を誰が担うかで、少なからず争いが起こることは――
 人類の歴史が教えるところです。

 おそらく――
 社会の構成員の全てが納得し得る利害調整は、人類には不可能なのでしょう。

   政治 ≒ 権力闘争

 との印象が拭い難いのは――
 このためです。

 その争いに選挙という仕組みで無血の決着をつけられるのが――
 民主主義の制度の最大の利点といえます。

 裏を返すと、

 ――民主主義でなければ、政治の流血は避け難い。

 ということです。

 政治の流血を避け、僕ら一人ひとりが安泰に暮らしていくためには――
 民主主義の制度が必要です。

 そして――
 民主主義の制度は、僕ら一人ひとりの有権者に対し、政治への関心を持つように求めています。

 だからこそ――
 僕らは政治に関心を持つ必要があるのです。

 端的にいえば、

 ――政治の流血を避けるために、政治に関心を持つ。

 ということです。

 これをオブラートに包んで述べるなら、

 ――僕ら一人ひとりが安泰に暮らしていくために、政治に関心を持つ。

 となります。