報道によると――
阿久悠さんが亡くなった。
今日のことである。
阿久さんのことは、ピンクレディーの歌詞提供者として知った。
『ペッパー警部』や『UFO』『サウスポー』などは、すべて阿久さんの作品である。
高校までの僕は、ピンクレディーが、どうにも好きになれなかったので――
阿久さんのイメージも、良いものではなかった。
が、大学に入り、年上の友人が酒の席で、
――阿久悠の詞はいい。
と語っているのをみて――
少し見方が変わった。
当時の僕は、辛島美登里さんを経て、詞に夢中になっていた。
それで――
以後、阿久さんの詞をみる度に、注意するようになった。
たしかに、よかった。
阿久さんは女唄で有名だ。
見事に女に成りきって書く――ピンクレディーの唄しかり――
が、阿久さんの真価は、男唄にあると思う。
例えば、八代亜紀さんの『舟歌』は、男にしか書けまい。
男唄には、阿久さんの想いのマグマが詰まっている。
もう一つ、気になることがある。
阿久さんにはアニメ・ソングも多い。
いずれもアニメの域を飛び抜ける良作だ。
代表作は『宇宙戦艦ヤマト』であろう。
一連の『ヤマト』作品の中で最も有名な唄である。
この唄を低く評価する声もある。他の唄と違い、
――アニメの域を抜けていない。
という。
たしかに、一見すると、そうなのだ。
が、もし、この『宇宙戦艦ヤマト』を、戦艦大和のオマージュととると、見方は変わってくる。
太平洋戦争(大東亜戦争)末期――
日本海軍の三千の将兵たちが、戦艦大和に乗り込み、沖縄に特攻をかけた。
阿久さんの『宇宙戦艦ヤマト』には――
その将兵三千の縋(すが)った夢幻が――あるいは、縋りたかったであろう夢幻が――迸(ほとばし)っているように思えてならない。
実は――
この先、万一、阿久さんとお話しをする機会があったなら――
ぜひ、このことを伺いたいと思っていた。
――『宇宙戦艦ヤマト』では、沖縄への特攻のことを意識されたりしませんでしたか?
と――
叶わぬ夢と消えた。