マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

「姫の虎退治」

 一昨日の参院選後のTV報道などで初めて耳にしたのだが、

 ――姫の虎退治

 というフレーズは、何ともいえぬ余韻を引く。

「姫」というのは、岡山選挙区に立候補していた民主党新人の姫井由美子氏のこと――
「虎」というのは、同じく岡山選挙区に立候補していた自民党現職の片山虎之助氏のことである。

 民主党が用いた選挙スローガンだ。

 岡山選挙区の結果は大々的に報道された。
 姫井氏が片山氏を破って初当選を果たしている。

 片山氏は自民党参院幹事長を務めていた大物候補であり――
 一方の姫井氏は無名に近い新人候補である。

 大方の予想は、片山氏の圧勝――悪くても辛勝――であった。
 が、結果は逆となった。

「姫」も「虎」も、それぞれ姓や名の頭文字をとっただけである。
 が、姫井氏は40代の女性で、片山氏はの強面の男性であった。

 頭文字となった漢字の意味が、二人の特徴を端的に表していた。
 とくに、片山氏は、日頃の率直な物言いが、

 ――傲慢である。

 とみられていたらしい。

 漢字の表意文字として特性が、片山陣営には凶と出た。

 姫井陣営も、言葉の恐ろしさが実感できたことであろう。

 報道によると――
 姫井氏は、当選確実の一報に、思わず言葉をのんだそうである。

 それにしても――

 ――姫の虎退治

 というのは、できすぎている。
 きく者に幻想的な物語を思わせる。

 物語の幻想が、有権者の心を無意識につかんだのではあるまいか。

 普通の感覚でいえば――

 ひと度、姫様が虎退治に出かけたら――
 やはり、見事に成敗して欲しいものである。