マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

匈奴(8)

紀元1世紀、匈奴が北匈奴と南匈奴とに分裂をし―― 北匈奴の方は、その世紀のうちに、モンゴル高原を去って人類史から消えた。 その後―― 北匈奴の遊牧民たちは、どこへ行ったのか。 …… …… 紀元4世紀―― ロシア平原の一部――黒海北岸――に忽然と姿を現した遊牧民た…

匈奴(7)

匈奴の君主・冒頓(ぼくとつ)が、漢の初代皇帝・劉邦(りゅうほう)を、その命を奪う寸前まで追いつめて以降、70 年ほどが過ぎると―― 形勢は逆転を始める。 匈奴は漢に対し、徐々に劣勢に転じていった。 劉邦の子や孫に当たる皇帝たちは、匈奴に対し、父や…

匈奴(6)

モンゴル高原に匈奴を興した遊牧民たちにとっては、中国大陸よりもロシア平原のほうが、心理的に遥かに近くに感じられた―― と考えられる。 匈奴が人類史に登場をするのは、紀元前4世紀頃―― それから時代を 500 年ほど遡った紀元前9世紀頃―― 人類史上、最古の…

匈奴(5)

もし、あの時、匈奴の君主・冒頓(ぼくとつ)が、漢の初代皇帝・劉邦(りゅうほう)を殺していたら―― 中国大陸の運命だけでなく―― ユーラシア大草原の運命も、大きく変わっていたかもしれぬ。 冒頓は大軍を率いて一気に南下―― 漢の都・長安を攻め落とし、そ…

匈奴(4)

匈奴の君主・冒頓(ぼくとつ)は―― 漢の初代皇帝・劉邦(りゅうほう)をなぜ見逃したのか。 …… …… ――最初から殺すことを考えていなかったから―― と考えるのが自然であろう。 あの時、冒頓が考えていたのは―― おそらく、 ――漢の皇帝以下、農耕民たちを懲らし…

匈奴(3)

匈奴の君主・冒頓(ぼくとつ)が、漢の初代皇帝・劉邦(りゅうほう)を国境紛争の末に取り囲んだ時―― 中国大陸の運命は激しく変わろうとしていた。 1,500 年後のモンゴルによる征服と同様のことが―― この時、起こっていたかもしれぬ。 …… …… 実際には起こら…

匈奴(2)

匈奴が、モンゴル高原を統べ、ユーラシア大草原の東部に帝国を興したのは、紀元前2世紀の序盤である。 それから約 1,500 年後―― モンゴルが、同様にユーラシア大草原の東部に帝国を興した。 モンゴルが、ロシア平原を版図に組み込み、ユーラシア大草原の全域…

匈奴(1)

ロシア平原とモンゴル高原とは、ほぼ一つの草原として、繋がっている。 その草原は―― 英語で、 ――Eurasian Steppe と呼ばれる。 日本語でも、カタカナ語として、 ――ユーラシア・ステップ と呼ばれることが多い。 ――ステップ(steppe) とは、 ――大草原 くら…

ほぼ一つの草原として――

――ロシアとは、“草原の帝国”モンゴルの後継国である。 という命題を受け止めるには―― ロシア平原とモンゴル高原とが、ほぼ一つの草原として、繋がっていることを知る必要があろう。 ――ロシア平原 とは―― 今日のエストニアやラトビア、リトアニア、ベラルーシ…

ウクライナとは――

――ロシアとは、旧ルーシのうち、“草原の帝国”モンゴルに感化をされた部分が、巨大化をした結果、成立をみた国である。 と考えてみる。 すると―― では―― ウクライナとは、いかなる国か。 …… …… 次のように考えられる。 ――ウクライナとは、旧ルーシのうち、“草…

再び、ロシアとは――

再び、 ――ロシアとは、いかなる国か。 と問いたい。 以下―― 感覚的に述べる。 ――ロシアとは、旧ルーシのうち、“草原の帝国”モンゴルに感化をされた部分が、巨大化をした結果、成立をみた国である。 と考えては、どうか。 わかりやすく述べれば、 ――ロシアと…

侵略を始めることができた理由

2022年2月中旬―― ロシア政府の最高指導者の脳裏に、13世紀前半のウラジーミル・スーズダリ大公国の不名誉が実際に去来をしていたか否かは、ともかく―― その史実を直観的に思い浮かべたロシア人が、一定の割合で存在をしていた可能性は―― 誰にも否定をされえ…

「攻め込むわけがない」と、なぜいえる?

2022年2月中旬―― ロシア政府がウクライナ侵略を始める直前―― ロシア政府の最高指導者は、 ――北大西洋条約機構の軍がロシアへ攻め込んでくる。 という懸念を切実に抱いていたように感じられた。 それを―― 北大西洋条約機構の加盟国および、それら加盟国の同盟…

ウラジーミル・スーズダリ大公国の不名誉

ロシアと向き合う時は―― 以下の2つのことを踏まえる必要がある。 ――若い歴史の国である。 ――歪な構造の国である。 もう1つ―― 踏まえておくのがよいことがある。 それは、 ――名誉挽回の国である。 ということだ。 ロシアの祖であるモスクワ公国は―― 旧ルー…

ロシアとは――

――ロシアとは、いかなる国か。 この問いに向き合う上で―― 欠かせぬ理解が2つある。 1つは、 ――ロシアは若い歴史の国である。 ということ―― その祖であるモスクワ公国が、モスクワ大公国となり、ロシア・ツァーリ国となり、ロシア帝国へとなっていった。 そ…

この決裂が――

キーウからモスクワへの権力の移管が、 ――タタールの軛(くびき) のない時代に完了をしていたならば―― 旧ルーシの近現代史は、だいぶ変わっていたに違いない。 ウクライナもロシアも―― 時代の流れの帰結として―― キーウからモスクワへの覇権の移ろいを自然…

もし“タタールの軛”のない時代に――

――タタールの軛(くびき) は、今日のロシアに暗い影を落としている。 政治史的に――というよりは、文化史的に――強いていえば、精神史的に―― である。 純粋に政治史的には―― モスクワ公国が、モスクワ大公国となり、ロシア・ツァーリ国となり、ロシア帝国への…

亡国ルーシの残像

――モスクワ公国 の発足は、13世紀の後半と考えられる。 当初は、 ――ウラジーミル・スーズダリ大公国 と呼ばれる旧ルーシの分国の、 ――そのまた分国―― だった。 このモスクワ公国が―― 14世紀初頭、にわかに版図を広げ、 ――モスクワ大公国 と名を変える。 やが…

屈辱の時代――タタールの軛

ルーシの諸侯たちは、モンゴルに征服をされ―― 13世紀前半から15世紀後半にかけ、屈辱の時代を過ごした。 この時代は、 ――タタールの軛(くびき) と呼ばれる。 ――タタール とは―― 本来、ユーラシア大陸の広大な草原で暮らしていたトルコ系民族のことを指すが…

我こそ亡国ルーシの再興者たらん

東欧・北欧の専制国家ルーシを、13世紀初頭、東方から襲ったのは、 ――草原の帝国 モンゴルだった。 初代君主チンギスの時代に―― 武力偵察を狙ったと考えられる小規模な侵略があり―― 二代君主オゴデイの時代に―― 本格的な侵略が始まった。 ルーシでは、相も変…

どちらも「自分たちこそが“親”だ」と――

ロシア人たちもウクライナ人たちも「自分たちこそが“親”だ」と思ってきた―― それゆえに起こったのが、2022年のロシア政府によるウクライナ侵略である―― そう考えれば―― 合点がいく。 あの戦いの凄惨さの理由が―― よくわかる。 …… …… ――どちらも「自分たちこ…

親子喧嘩

ロシア政府によるウクライナ侵略の戦争では―― 2023年秋頃から次第に厭戦気分が漂い始めている。 ウクライナ軍が反転攻勢を仕かけ、 ――思うような成果を上げられていない。 と判明をした頃である。 …… …… この数年で顔見知りになった高齢の男性がいる。 長ら…

遅すぎた

ウクライナ政府の最高指導者が―― 2022年のロシア政府によるウクライナ侵略を防ぐには―― どうすべきだったか。 一つは―― ロシア政府の最高指導者が、自分の政治生命を奪おうとは思わぬように振る舞うべきだった。 そのために―― ロシア政府の最高指導者と、あ…

どうすべきだったか

2022年のロシア政府によるウクライナ侵略は―― ロシア政府の最高指導者が、ウクライナ政府の最高指導者の政治生命を奪いに行ったために―― 起こった。 ロシア政府の最高指導者は―― それを奪いに行くべきではなかった。 奪いに行き―― 奪えず―― 国家間の殺し合い…

政治の“殺し合い”から国家間の殺し合いへ

――政治の“殺し合い” は、しばしば、 ――国家間の殺し合い と化す。 ――政治の“殺し合い” の「殺し合い」とは、 ――政治生命の遣り取り を含む。 普通は、 ――命の遣り取り は含まぬ。 が、 ――国家間の殺し合い の「殺し合い」とは、 ――命の遣り取り を指す。 何…

非凡な政治家は――

平凡な政治家は―― 逃げずに戦おうとする。 が―― 非凡な政治家は違う。 できるだけ戦わずに、うまく逃げようとする。 政治の“殺し合い”を避けようとする。 なぜ―― それを避けようとするのか。 …… …… 政治の“殺し合い”は―― しばしば国家間の殺し合いと化すから…

平凡な政治家は――

政治家は―― 政治をわかりやすくするために、 ――殺し合い を厭(いと)わぬ。 それが―― 本物の「命」の遣り取りか、政治家の「政治生命」の遣り取りかは―― 別にして―― …… …… 特に、 ――平凡 たらんとする政治家は、 ――政治に“殺し合い”は必要だ。 と考える。 ―…

政治をわかりやすくする

政治は“殺し合い”が、わかりやすい―― その「殺し合い」で遣り取りをされるのが、本物の「命」か、政治家の「政治生命」かは措くとして―― …… …… つまり、 ――政治では邪魔者の“命”を奪っておけ。簡単なことだ。 というわけである。 これに対し―― 邪魔者と誼(…

政治生命の殺し合い

近代以前までの政治では―― 殺し合いが普通であった。 あるいは、 ――殺し合いが厭(いと)われることはなかった。 というほうが穏当かもしれぬ。 …… …… 現代は少し違う。 少なくとも現代の民主主義の国家では―― 殺し合いは厭われる。 政治に携わっていて―― 誰…

政治は殺し合いが――

政治では殺し合いが、わかりやすい。 なぜか。 それは―― 政治の本態を考えれば、わかる。 …… …… ――政治の本態 とは、 ――社会の利害調整 である。 利益は公正に分配をし―― 損害は公平に分散をする―― その“調整”を試みる者の前に―― 必ず立ちはだかるのが、 ――…