歌は――
その詞がいかにもフィクションであるように書かれていても――
誰かが情感を込めて真剣に唄ったら、
――もしかして、これ、フィクションじゃないんじゃないか。
などと思わせる――
それだけの力が歌にはあると思うのです。
同じことを――
もう少し簡単にいってしまうと、
――文字として書かれた歌詞と誰かが唄っている歌声とでは、説得力がまったく違う。
ということですね。
この結論は、
――歌詞は読み手のものであり、歌声は唄い手のものである。
という仮定から導出できるでしょう。
あえて乱暴な言い方をすれば、
――読み手から歌詞を奪いとって歌声に変えて投げつけるのが歌である。
ということです。
なんだか、とってもアグレッシブなプロセスですが――
このプロセスは歌の魅力から決して切り離すことはできない、と――
僕は思います。