――プリンシプル(principle)
という言葉があります。
――原理、主義、正道
といった訳語があてられます。
戦後、日本の復興に尽力した人物に白洲次郎がいます。
政治家・吉田茂の側近として活躍しました。
連合国軍最高司令官マッカーサーの非礼を怒鳴りつけた人物としても有名です。
その白洲の愛した言葉が「プリンシプル」です。
――プリシンプルのない日本
というタイトルの遺稿集が出版されているそうです。
タイトルをみただけで、どういう内容か、だいたいわかりますね。
一般に、白洲の「プリシンプル」には「原則」という訳語があてられるようですが――
ケンブリッジに留学し、英国紳士の流儀に通じた白州のことですから、迂闊な逐語訳は慎むべきでしょう。
試みに、手元の英英辞典で調べてみると、
―― a truth or belief that is accepted as a bese for reasoning or action
――思考や行動の基盤として受け入れられる真理ないし信念
と、あります。
白洲の「principle」は、おそらく、これですね。
たしかに、日本にはないかもしれません。
少なくとも、これを重視していないようにみえる日本人は、決して少なくない――
が、僕は重視したいのですね。
白洲のいうプリンシプルを、です。
僕は、妥協や打算、迎合といったことが大嫌いで苦手なのですが――
プリンシプルを保った上での妥協、打算、迎合は許せます。他人にも許せるし、自分にも許せる――
が、プリンシプルなき妥協、打算、迎合はダメです。
何のための妥協なのか――
何のための打算なのか――
何のための迎合なのか――
それが、わからなくなると、何のための人生かまで、わからなくなります。
白洲も、そう考えていたのではないでしょうか。