――文章とは一気に書き上げるものである。
という見方がある。
小説にせよ、随筆にせよ、評論にせよ、一気に書き上げた作品こそが真の良作たりうる――という見方である。
僕も以前は、そう思っていた。
が、最近、
(どうも違うな)
と思い始めている。
何度も書き直した作品にも、それなりの良さはある。
おそらく、良さの質が違うのだ。
一気に書き上げたときの良さと、何度も書き直したときの良さとでは、根底から別物であるに違いない。
一気に書き上げた作品は、一気に読むのが良い。
何度も書き直した作品は、何度も読むのが良い。
そうやって、良さを味わいわける。
そうでないと、良さはわからぬ。
一気に書き上げた作品のみを良作とする人は、一気に読むクセがついてしまった人に違いない。
以前の僕が、そうだった。