都市部で心臓発作の男性死亡率が上昇しているそうである。
今日のネットのニュースが伝えている。
この手のニュースには注意が必要だ。
一見、わかりやすい内容だけに、その意味を正確に掴むのは難しい。
おそらく、近年の治療技術の発達に伴って減少していた死亡率が、食の欧米化に伴う罹患率(病気になる割合)の上昇によって、引き上げられたのであろう。
いくら救命率が上がっても、罹患率が増えれば、死亡率が上昇するのは、当然である。
正確な解説は専門家に任せよう。
僕が気になったのは、そのことではない。
――人の体は、なんとも儚(はかな)い
ということである。
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学生時代に医学を専攻したせいで――
いわゆる病気の知識は、それなりに豊富である。
人類は、呆れるくらいに多くの病気をみつけている。
病気のことを記す医学書は、ほんの基本的なものだけで何十冊にも及ぶ。一つひとつ挙げていってはキリがない。
これだけ膨大な病気に触れていくと、やがて、病気を特別視しなくなる。
(病気も体の変化の一部にすぎない)
と感じるようになる。
体の変化のうち、とくに辛辣な影響を及ぼす変化のみを取り上げ、「病気」と呼んでいるにすぎぬ。
「病気」の意味を広くとるならば――
老いこそが最大の病気だといえよう。
生まれたときから、万人が罹(かか)っている病気である。
人の体は、生きていれば、必ず変化していく。
体だけではない。万物が変化していく。その変化のし方にバリエーションがある。
可愛らしい娘さんが大人の女性に成熟するのも――
中年の男が心疾患で命を落とすのも――
そんなに異質なことではない。
だからこそ、思うのである。
――人の体は、なんとも儚い。
と――
いや――
儚いのは万物か。
人の体を殊更に取り上げるのは、僕の弱さの裏返しかもしれぬ。