シンガーソングライターに向かって、
――あの詞は、どういう意味なのですか?
と訊くことは愚の骨頂だ、という見方がある。
――詞には意味などない。
との考えに立脚した見方だ。
詞の良さは、書き手も読み手も、自分の思いを自由に込められるところにある。
詞の解釈が一意に定まるなら、それは、もはや詞ではない。
ただの文である。
思いを自由に込めるには、音が美しくなくてはならぬ。
音の汚い詞ならば、込める思いも逃げまどう。
だから――
詞は、音が美しくなくては、話にならぬ。
何かと似ている。
アイドルだ。
芸能界のアイドルである。
あれも、容姿が美しくなくては、話にならぬ――少女だろうと少年だろうと――
容姿が美しいからこそ、ファンは自分の思いを自由に込めることができる。
容姿の汚いアイドルでは、込める思いも逃げまどう、というものだ。
(そうか! アイドルは詞なのか!)
そう思ったとき――
僕の中で何かが氷解した。
おそらく――
アイドルへの偏見が、消えてなくなったときである。