――外科と内科――
の話を僕がしていると――
「お前は複雑に考えすぎなんだ」
と叱られることがあります。
――外科は体の外面から病気や怪我を治そうとして、内科は体の内面から病気や怪我を治そうとする――そういう理解で十分ではないか。
というのです。
たしかに――
少なくとも表面的には――
(そういう理解であっている)
と、僕も思っています。
例えば――
ある臓器が病んでいるときに――
体の外面に穴を開けて臓器を取り出すというのが外科の発想であり――
体の内面へ薬を送り込んで臓器を癒すというのが内科の発想である――
といってしまうことはできます。
あるいは――
ある手足が痛んでいるときに――
体の外面に穴を開けて手足の痛みの原因を除くというのが外科の発想であり――
体の内面に薬を送り込んで手足の痛みを散らすというのが内科の発想である――
といってしまうこともできます。
が――
実際には――
そうではなくて――
外科も内科も、実は、
――体の外面から病気や怪我を治そうとしている。
というのがよいのです。
たしかに、内科では薬を体の内面へ送り込みます。
が――
その送り込み口が体の外面にあることを忘れてはいけません。
内科も外科も――
病んでいる臓器を体の外側からみて――
あるいは――
痛んでいる手足を体の外側からみて――
体の内側に思いを巡らせているのです。
――医療の実践
は――
内科であろうと外科であろうと――
必ず、
――体の外側から内側へ――
と向かいます。
では、
――体の内側から外側へ――
と向かうことはないのかというと――
そうではなくて――
――医学の論理
は、
――体の内側から外側へ――
と向かいます。
例えば、
――体の仕組みを考えれば、病気や怪我の治し方は本来こうあるべきだ。
といった類いの主張は、
――体の内側から外側へ――
と向かっています。
――体の仕組み
とは、
――体の内側を司っている原理
のことであり、
――病気や怪我の治し方
とは
――体の外側から働きかける手法
のことであるからです。