いつのことだったか、すっかり忘れてしまったのだが――
たぶん、まだ僕が高校生のときである。
不登校の女子高生が、TVのインタビューに答え、学校に行かない理由をブッキラボウに説明していた。
曰く、
――17にもなってブルマなんか、はきたくないから――
というのである。
(ええー!)
と思った。
「ブルマ」というのは、女子用体育着の「下」のことである。
最近では滅多にみなくなった。
理由は簡単で――
――女子児童や女子生徒に極めて不評だから――
だという。
僕は男だが――
たしかに、わかる気はする。
あんなデザインでは、パンツ1枚でいるようなものだろう。
さぞかし落ち着かなかったに違いない。
が――僕が高校生だった当時は違った。
ほとんどの学校の女子用体育着がブルマを採用していた。
だから、女子高生は学校に通う限り、体育の時間になると、問答無用でブルマを着用させられた。
決して気持ちの良いことではなかったろう。
だからといって――
これを不登校理由の第一に挙げるのは、いかなる了見か。
――そこまでイヤがるべきものなのか?
ということである。
引っ掛かったのは、「17にもなって」であった。
(――ってことは、13や14ならいいのか?)
ということだ。
13や14なら、ブルマを恥ずかしく感じることもないのか、と――
そんなことはあるまい。
13や14といえば、中学生だ。
中学生は、そこまで幼くはない――特に女子生徒はそうである。
では、なぜ「17にもなって」なのか。
その言葉の意味を、当時の僕は全く察知できなかった。
今も、十分に察知できているとは思わぬ。
が、一つだけ得心のいく解釈がある。
事は、羞恥心の問題ではなかったのではないか。
美的センスの問題であったのではないか。
残念ながら、17になったらブルマが似合わない女の子も、いるのである。
成熟した女性がブルマをはくと、不格好にみえる。
あれは、未成熟な少女がはくから、サマになるのだ。
あの時、TVのインタビューに答えた女子高生は、それをいっていたのかもしれない。
そういえば――
ちょっと十代にはみえないくらいに大人びた女子高生だった。
おそらく、極めてマトモな美的センスの持ち主だったのだろう。
その胸裏の奥底には、次々と変わっていく自分の体つきへの戸惑いも、あったに違いない。