安倍内閣の暗さを象徴する事件といってよい。
農林水産大臣の松岡利勝・衆院議員が亡くなった。
各種報道によれば――
自殺の公算が高いようである。
議員宿舎で首を吊っているのが、わかったらしい。
*
本当に自殺であるならば――
うつ状態が高じての末路ではなかったか。
昨今の政界や世論の動きをみていれば――
松岡議員が酷く追いつめられていた状況は、容易に想像できる。
うつ状態は、予見できぬ変調ではない。
特別な医療経験も不要だ。
追いつめられれば、誰だって気分が落ち込むものである。
この落ち込みが、うつ状態だ。
「うつ状態」というと、何やら特殊な精神状態を指すようだが――
そうではない。
うつ状態とうつ病とは厳密には区別される。
同じうつ状態であっても、気分の落ち込みの原因が明らかでない場合には、「うつ病」といいかえる。
松岡議員の場合は、うつ状態であったろう。
少なくとも、うつ病であることを積極的に疑える所見は、報道されていない。
うつ状態の対処で重要なのは休養だ。
薬物やカウンセリングも重要でないとはいわないが――
まずは休養であると、僕は考えている。
休養をとらねば、うつ状態は日増しに悪化する。
悪化した結果、自殺に至ることも稀ではない――今回のように――
うつ状態での自殺は、病死の一種である。
例えば、脳卒中で死ぬのと変わらない。
松岡議員に休養を与えることが、なぜ、できなかったのか?
うつ状態の人に休養を与えないのは、脳梗塞の人に休養を与えないのと同じである。
任命権者の責任が問われよう。
直近の部下の命が守れずに、国民の命が守れようか。
このような経緯での現職閣僚の自殺は、憲政史上初だそうである。
どうやら――
安倍首相は、自分の周囲に、医に通じた人を置いていなかったようだ。
僕は、かねてより、今の政権には偏りがあると感じていた。
表面的には人事・行政の偏りであり――
内面的には知識・思想の偏りである。
そうした偏りを称し、「暗さ」といった。
今回の事件は、あまりにも象徴的である。