若い男の無分別な欲望の一つに、
――この女をオレ色に染めてやる!
というのがある。
演歌などで、しばしば見聞きするフレーズだ。
いうまでもなく――
実に無分別な欲望である。
そんな暴挙の成功するはずがないことは――
現実の男女の機微を知った者になら、すぐにピンとくる。
だから、
――若い男どもよ、経験を積め!
などと、いいたいのではない。
そのような欲望を、多くの男たちが持ちやすいことは、たぶん事実であって――
それをムリに抑え込んだところで、所詮、したり顔のヤセ我慢にしかならない、という見通しが、僕にはある。
では、どうするのがよいのか。
簡単である。
最初から「オレ色」でありそうな女性を探すことだ。
そして――
その女性と首尾よく交際をスタートさせ――
徐々に相手を理解していくプロセスの中で――
――オレ色に染めてやったぜ!
と、勘違いしてみせることである。
もし可能なら――
終生、勘違いをし通すのがよい。
幸せな一生が送れるだろう。
大丈夫である。
男の理性というものは、わりと堅牢なようでいて――
実は、そんなに確かなものではない。
自分に何度も言い聞かせているうちに――
いつか自分自身を欺くことも、ありえないことではない。
大切なのは――
自分流の「オレ色」として、そんなに奇抜な彩りを選んだりはしないことだ。
奇抜すぎると――
そのような女性と、終生、巡り会うことはないであろう。
ほどほどの「オレ色」がよい。