小説のネタが次々と浮かんでくるので――
困る。
次々と浮かぶのだから――
次々と書いていけば良さそうなものだが――
それらを、一つひとつ書いていく元気がない。
ただの怠け心だが……。
少し言い訳をすると――
最近、副業に割かれる時間が増えたので――
よほどの覚悟がない限り――
なかなか書き続ける気持ちに、ならないのだ。
実は、幾つかは書いている。
書き始めるだけなら、何とかなるのである。
が、書き終えることができない。
途中で、投げ出してしまう――
いや――満足してしまう。
小説を書いていると――
あるとき、
(あ、この物語は、こういう方向に流れたがってるんだな)
と、わかってしまうことがある。
それが、まずい。
物語の行き先が、わかってしまうと、
(ま、もう、いいか)
と、なってしまう。
そうなったら――
アウトだ。
よほどのことがない限り――
書きかけを顧みる気にはならない。
もちろん、
――ちょっと、早く続きを書けよ! 気になって、しょうがないじゃないか!
などの熱烈な催促でもあれば、話は別だが――
ただの甘えだな。
ただし――
少し気になることがある。
ある高名な作家さんが、何かの随筆で、ぽつりと呟くように書いていた。
――作家にはファンレターを書け――もし、その作家の新作が読みたいのなら――
と――
強烈な印象となって残っている。
一通のファンレターが――
何百ページもの大作をもたらすことだって、あるだろう。
もちろん――
それは作家の甘えである。
が、
――さもありなん。
と思う。
小説の執筆とは――
結局は、他者とのコミュニケーションだ。