マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

なんと悲しい

 たまっていた古雑誌を整理していたら――
 本田美奈子さんの対談の記事をみかけた。

 製薬会社が広告を兼ねて印刷しているパンフレットのようなものである。

 本田美奈子さんは、1967年生まれの歌手――
 超売れっ子のタレントというわけではなかったが、歌手としての実力は方々で評価されていた。

 2005年、急性骨髄性白血病のために死去――
 38年の生涯であった。

 対談は2001年のものらしい。

 テーマは、てっきり白血病かと思ったら――
 さにあらず。

 花粉症のことであった。
 当時の本田さんも花粉症に悩んでいて、聞き役の医学者に、

 ――花粉症を侮ってはいけない。

 と、朗らかに語っておられる。
 その横に、まだ十分に若々しい笑顔の写真が掲載されていた。

 その表情が、あまりにも屈託なかったので、
(闘病生活を送りながら、こんな笑顔ができるのか?)
 と思って――
 急ぎ、公式サイトなどを巡ってみたが――
 そうではなかった。

 発症は2005年1月――死去の10ヶ月前――
 対談から数えて4年後のことである。

 ちょっと安心した反面――
 にわかに、人の命の儚さが身にしみた。

 ――花粉症を侮ってはいけない。

 と、朗らかに語った本田さんは――
 4年後の御自分の運命を知らない。

 人とは、なんと悲しい存在であろう。