――自分の考えだけが正しい!
と信じ込んでいる人は迷惑なのですが、
――世の中には正しい考えが一つだけ!
と信じ込んでいる人も――
それに負けないくらいに迷惑でしょう。
世の中には正しい考えがいっぱいあって――
それらが互いに補強し合ったり、反発しあったり、全く独立していたりするのです。
とはいうものの――
こうした見方は、僕らの常識に根差した印象とは食い違います。
例えば、自然科学の世界では、「世の中には正しい考えが一つだけ!」の構図が支配的であるようにみえますので――
実際は、そうではなくて――
自然科学の世界でも、有力な学説が並立していることは珍しくありません。
また――
ほぼ完璧とみなされている学説であっても、「ほぼ完璧」なのは現代においてのみであり――
過去には「荒唐無稽」の烙印を押されていた歴史的事実があったり――
未来には「あまりに素朴」の批判を浴びる可能性が残されていたりするのです。
正しい考えは無数にあるのです。
どれか一つというわけではない――
そうした中で、「どれが本当に正しいのか」と問うことに、それほどの意味はありません。
もし――
強いて問うのなら、
――どれが自分にとって本当に正しいと感じられるのか。
でしょう。
それは信条であって、洞察ではありません。