――得恋
という言葉が――
あるそうですね。
意味は、
――恋愛を成就すること
だそうで――
あの「失恋」の対義語なのだそうです。
*
「得恋」という言葉に行き当たったのは――
実は、
――失恋理論
という理論が成立しうるかどうかを考えていたからです。
この場合の「理論」は、「科学理論」の「理論」でして――
例えば、「相対性理論」の「理論」と同系統とお考え下さい。
もしも「失恋理論」というものが成立しうるなら――
それは、どんな理論でしょうか。
結論だけをいうと――
おそらく――
それは、下記の2つの条件を満たすでしょう。
1) あらゆる状況(時代・社会)で、あらゆる人間の失恋の仕方を予測する
2) より確かな予測を与える新理論が示されたら、それにとって代わられる
すぐにお気づきの方も多いかと思いますが――
1)は科学の再現性(実験や観察の結果が再現できること)に、2)は科学の反証可能性(間違っている場合に「間違っている」と明確に判断されうること)に相当します。
(そういう理論なら、十分に成立しうるんじゃないか)
というのが――
僕の見立てです。
ここで見落とせないことは――
――たぶん得恋理論は成立しえない。
ということです。
もしも「得恋理論」が成立しうるなら、それは、前述の2)と、
3) あらゆる状況(時代・社会)で、あらゆる人間の恋愛の成就を予測する
との2つの条件を満たす必要があります。
2)はともかく、3)を満たす理論というのは――
ちょっとありえないと思うのですね。
もし、そんな理論が成立したとして――
それを熟知した実践家が現れたとしたら――
その実践家は、あらゆる恋愛を成就させていくでしょう。
あらゆる恋愛を成就させてしまうような人間は――
もはや「人間」とは呼べないような気がします。
なので――
「失恋理論」は成立しえても、「得恋理論」は成立しえないのではないか、と――
僕は思うのです。