ビジネスの場では――
状況が単純なときには突っ走り――
状況が複雑なときには立ち止まるのがよい――
という話を知りました。
状況が単純なときというのは――
自分の成すべきことや自分が所属する組織の成すべきことが明瞭にわかっていて、それを成すにはどのような手順を踏めばよいのかを誰もが瞬時に理解できるようなときです。
一方――
状況が複雑なときというのは――
それらが瞬時には理解できないとき――
例えば――
自分の成すべきことや自分が所属する組織の成すべきことがわからない――あるいは、成すべきことはわかっていても、それをどのような手順で成せばよいのかが、なかなか理解できないとき――です。
よって――
すぐれたビジネスパーソンやビジネスリーダーは、状況が複雑なときには必ず立ち止まる――
“立ち止まる”とは――
ビジネスの手をいったん休めて内省する――あるいは、これまでのビジネスの経過を振り返り、それまでは見落としていた問題点を探索する――
そういうことです。
この話を知って、
(なるほど!)
と合点がいったのですが――
すぐに、
(いや、待てよ)
と自問しました。
もし、複雑な状況で立ち止まることが、すぐれたビジネスパーソンやビジネスリーダーの必要条件であるならば――
まず大切なことは、“立ち止まること”ではなくて――
現在の状況が複雑なのか単純なのかを確実に見抜くことですよね。
そして、これを確実に見抜くには――
“わからない”とか“なかなか理解できない”という自分の心理を確実に自覚することです。
なぜならば――
複雑な状況とは――
自分の成すべきことや自分が所属する組織の成すべきことがわからない――あるいは、成すべきことはわかっていても、それをどのような手順で成せばよいのかが、なかなか理解できないとき――だからです。
僕は――
“わからない”を確実に自覚すること――“なかなか理解できない”を確実に自覚することこそが――
人の知性にとっての最も手強い難敵であると考えています。
わかっていること――あるいは、瞬時に理解できることは――
人の知性にとってはお得意様であって――
そういったことを人の知性で扱うことは、朝飯前といってよいでしょう。
よって、
――すぐれたビジネスパーソンやビジネスリーダーは、状況が複雑なときには、必ず立ち止まる。
というのは――
たしかに、その通りと思うのですが――
でも――
これは、けっこうな離れ業である、ということを――
僕らは十分に理解しておく必要があるでしょう。
人は、なぜ立ち止まらないのか――
なぜ突っ走るのか――
それは――
自分や自分たちが複雑な状況にあるときに、その状況を、
――たしかに複雑だ。
と見抜けないからこそ――です。
そうやって突っ走った結果――
どうにも取り返しのつかない失敗に至ることが、しばしば、あります。