マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

「おカネをもらう」の不健全

 ――おカネをもらう。

 ということに――
 何ともいえない違和感を覚えます。

 ――原始的な不健全さ

 とでもいいましょうか。

 この違和感は、どこからくるのか――

 おそらくは、

 ――おカネは、もらうものではなくて、稼ぐものである。

 という前提からくるのでしょう。

「おカネをもらう」とは――
 他者による何らかの計らいによって、おカネを手にする――
 ということです。

「おカネをもらう」の典型例は――
 子どものお小遣いです。

 親による慈しみの計らいによって――
 子どもは、おカネを手にします。

 では――
「おカネを稼ぐ」とは、どういうことか。

「おカネを稼ぐ」の典型例は――
 商売です。

「おカネを稼ぐ」とは――
 何か物を渡すこと、あるいは何か事を成すことの引き換えに、おカネを手にする――
 ということです。

 それぞれ、

 ――即物性

 ――即事性

 とでも呼びましょう。

 これら2つの性質とは別に――
 さらに重要な性質があります。

 それは――
 物や事と引き換えに、いつでも、おカネを手にできる――
 という性質です。

 いわば、

 ――随時性

 ですね。

 つまり、「おカネを稼ぐ」とは――
 物や事に即して随時おカネを手にできることをいいます。

 即物性・即事性・随時性の全てを満たしながら、おカネを手にしているとき――
 人は、おカネを稼いでいます。

 一方――
 これら3つの性質のうちの1つ以上が欠けているとき――
 人は、おカネをもらっているか、もらっている可能性が高いといえます。

 例えば、給料について考えてみましょう。

 会社から支払われる給料は――
 労働という事との引き換えですから――
 即事性は、まずまず保たれているといえます。

 が――
 即物性や随時性は、大いに怪しいといえましょう。

 一般に、給料は――
 会社の商品をたくさん売ったからといって、増えるものではありません。

 また――
 会社が定めた給料日が来ない限り、決して支払われることはありません。

 よって――
 給料は、即物性や随時性を満たしているとは言い難い――

 給料は、「稼ぐもの」よりは、「もらうもの」に遥かに近いのです。

 が――
 だからといって――

 ……

 ……

 ――給料をもらうなど、けしからん!

 というつもりは――
 僕にはないのですよ。

 給料は、たしかに「おカネを稼ぐ」の原則からは外れますが――
 これをもらうことによって、暮らしが安定することは間違いありません。

 とくに物に即さなくても、定められた日に確実に、おカネを手にできるのなら――
 こんなに安心なことはありませんので――