例えば――
上り坂が苦なのではなくて――
下り坂が楽なのではなくて――
下り坂から上り坂に変わるときが苦なのです。
あるいは――
上り坂から下り坂に変わるときが楽――
……
……
人は、変化に敏感です。
変化がなければ――
人は、鈍感です。
ずっと上り坂を登っていれば、そのうちに慣れてしまう――
ずっと下り坂を降っていれば、そのうちに飽きてしまう――
慣れてしまえば、苦が苦ではなくなり――
飽きてしまえば、楽が楽ではなくなる――
苦も楽も感じない――感じられない――
それが、鈍感の本質です。
鈍感というと、何だか悪いことに思え――
敏感というと、何だか善いことに思えますが――
そんなことはありません。
敏感は、変化への適応であり――
鈍感は、変化がないことへの適応です。