――自分で自分のことがわからなくなってしまっている人と、いかに向き合っていくのがよいのか。
という問いは――
人が、人の世を生きていく上で――
もっとも難しい問題かもしれません。
もちろん――
あきらかに「自分で自分のことがわからなくなってしまっている」とわかるような人が相手の場合は――
それほど問題とはなりません。
ただ、その人のことを、いたわってあげればよい――
問題となるのは――
たしかに自分で自分のことがわからなくなってしまっているにもかかわらず、あきらかにそうとはいえないような人が相手の場合です。
そういう人と向き合う場合は――
決して、「自分で自分のことがわからなくなってしまっている」と決めつけることも、「自分で自分のことがしっかりとわかっている」と決めつけることも、許されません。
どちらの可能性も念頭に置きながら――
その人と、真摯に向き合っていかなければならない――
これは――
やってみれば、すぐにわかりますが――
かなり難しいことです。
というのも――
人は――
「自分で自分のことがわからなくなってしまっている」と決めつけないときには、「自分で自分のことがしっかりとわかっている」と決めつけたくなり――
「自分で自分のことがしっかりとわかっている」と決めつけないときには、「自分で自分のことがわからなくなってしまっている」と決めつけたくなるからです。