マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

「散逸構造」の知名度が低い理由

 自然界のエネルギーは、ただ流れるということは決してなく――
 必ず、散り乱れて流れるのだ、ということを――
 3日前の『道草日記』で述べました。

 一般に“熱力学の第二法則”として知られている原理です。

 ――エントロピー増大の原理

 ともいわれます。

 ここでいう「エントロピー」とは、エネルギーの質のことです。

 例えば――
 10の量のエネルギーが1つの塊で流れているのと、1の量のエネルギーが10の塊に分かれて流れているのとでは、

 ――エネルギーの量は同じだが、質は違う。

 と考えるのですね。

 10のエネルギーが1つの塊として流れるほうが、1のエネルギーが10の塊として流れるよりも質が良い――
 と、現代科学はみなします。

 この“エネルギーの質”は、“エネルギーの量”を温度(絶対温度)で割った値で表現されます。

 エネルギーに関する議論の都合から、そのように定義されたのですが――
 なぜ、その定義だと都合が良いのかの説明は(ちょっと大変なので)今は省きます。

 とにかく――
 現代科学では、“エネルギーの量”を温度で割った値がエントロピーであり――
 この「エントロピー」を“エネルギーの質”の指標とみなすのです。

エントロピー」は直観で理解しにくい指標の代表例として有名でして――
 よく、

 ――これが悪名高き「エントロピー

 などといったいわれ方をするのですね。

 エネルギーのことを深く学ばなければならない大学生らには――
 ひどく嫌われています。

 ときには大学の教師にさえ嫌われていて、

 ――「エントロピー」はわかりにくいので、学生の皆さんには大変に嫌われているのですが、実は私も大嫌いです。

 と講義中に公言した人を知っています。

 ここまで嫌われていると――
 かえって何だか不憫に思えてきて、
(もっと「エントロピー」のことを好きになろうか)
 などと、僕などは思うのですが――

 そういう大学生は、今も昔も奇特のようです。

 ……

 ……

 こうして――

エントロピー」は人々から忌避され続けているわけですが――

 そのトバッチリを手ひどく受けているのが――
 先日来この『道草日記』で触れてきた、

 ――散逸構造

 ではないでしょうか。

 20世紀ベルギーの理論化学者・物理学者イリヤ・プリゴジンが提唱した散逸構造の概念は――
エントロピー増大の原理”と密接に関連しています。

 きのうの『道草日記』で、

 ――「散逸構造」は知名度が不当に低い。

 ということを述べましたが――

 その原因は「エントロピー」の不人気にあるのではないか、と――
 僕には思えてなりません。