“熱力学の第二法則”に――
きのうの『道草日記』で触れましたが――
この法則は――
本来の学問上の意義とは別の観点から――
世界に広く物議を醸したことで有名です。
20世紀イギリスの物理学者・小説家チャールズ・パーシー・スノーが――
1959年に発表した自著の中で――
次のように指摘したのですね。
と――
その真意は――
人文科学系の教育を受けた人々と自然科学系の教育を受けた人々との間には、文化的断絶がある――
という懸念でした。
つまり――
人文科学に明るい人が、
――物理学者たちは、まったく本を読んでいない。
と呆れることは――
自然科学に明るい人が、
――小説家たちは、まったく自然法則を知らない。
と呆れることに相当する――
ということであったようです。
たしかに――
そんな中傷合戦を互いに延々と続けるのは、不毛ですね。
物理学者も、シェイクスピアくらいは読んだ方がよいし――
小説家も、“熱力学の第二法則”くらいは知った方がよい――
と、僕も思います。
が――
自分自身が大して勤勉でないことを自覚しているものですから――
とは、なかなか思えず――
(どんな人であっても、「物理学者たちは本を読んでいない」とか「小説家たちは自然法則を知らない」とかいうようなことは、いわないほうがよい)
などと、思ってしまいます。
一種の日和見主義でしょうかね(苦笑
……
……
ちなみに――
第二法則があるからには――
第一法則もあるわけでして――
“熱力学の第一法則”は、
――エネルギーは流れるけれども、どこかで消えたり、どこかで生まれたりはしない。
というものです。
――エネルギー保存の原理
ともいわれます。
……
……
スノーは、なぜ、第二法則を引き合いに出したのでしょうね。
第二法則を知っていても――
第一法則を知っていなければ――
驚きや有難みは半減すると思うのです。
……
……
おそらく――
第一法則の方が、第二法則よりも、人間の恣意性を感じさせるからです。
第一法則の内容は、「エネルギー」の定義に大きく依存しています。
第一法則が成り立つように「エネルギー」を定義したと、いえなくもないのですね。
第二法則は、そうではありません。
第二法則の内容は、「エントロピー」の定義に近しく関連していますが、そんなに大きくは依存していません。
そもそも――
第二法則の内容は、人間には不都合なのです。
――エネルギーが流れるときは、必ず、散り乱れる。
というのは――
人間がエネルギーを100%の効率で伝達することは決して許されない――
ということを意味します。
まさに、
――人間の都合など一切お構いなし!
つまり、
――より自然法則らしい。
のです。