人が味わえる最高の幸せは、
――ああ、暇だ。何もやることがない。
と呟くことです。
今、何もしていないのに――
あるいは――
これから何かしなくても――
とくに困らない――
飢餓感や恐怖心に苛まれることもなく――
しばらくは満足かつ安心に過ごせそうである――
そういった見通しをもつことは――
少なくとも狩猟や採集に明け暮れていた原始の人類には――
夢にも描けなかった幸せのはずです。
原始といわず――
古代や中世、近世の社会においても――
事情は、本質的には同じであったように思います。
人が、この世に生を受けてから、真っ先に味わうべきは、
――暇をもてあそぶ幸せ
です。
これが――
人に許されている“最も人間らしい幸せ”です。
ありがたいことに――
現代の日本社会では――
この幸せを、少しの工夫で掴めます。
小学校の夏休みの宿題を減らすことです。
そのような計らいによって、
――お母さん、やることがなくて退屈だよ~。
と愚痴をこぼせた小学生は――
大人になって“人間らしい幸せ”の何たるかを思い違えるような心配は――
たぶん、要りません。