マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

遊牧の起源(5)

 紀元前9世紀、

 ――キンメリア人

 が、世界最古の遊牧民族として、人類史に名を留めているのは――

 その特異な生活様式が農耕民たちに銘記をされたからである。

 

 その、

 ――特異な生活様式

 とは何かというと――

 

 ――騎馬

 である。

 

 馬を家畜として飼い慣らし――

 それを生活の道具とした。

 

 加えて――

 時に戦闘の武器にもした。

 

 ――騎兵

 である。

 

 農耕民たちは、

 ――歩兵

 を基本としていた。

 

 ――歩兵

 では、

 ――騎兵

 の突進は防げぬ。

 

 ひとたび戦いになれば――

 農耕民たちは、為す術がなかった。

 

 このことによって――

 遊牧民たちが、農耕民たちの脅威となった。

 

 畏怖は、もちろん――

 畏敬の念も、あったかもしれぬ。

 

 それくらい――

 遊牧民たちの、

 ――騎馬

 の技術は、農耕民たちの度肝を抜いた。

 

 紀元前5世紀ギリシャの歴史家ヘロドトスは――

 有名な自著『歴史』の中で――

 馬を使いこなす遊牧民たちの暮らしぶりを活き活きと描いた。

 

 ヘロドトスが描いたのは――

 キンメリア人ではなく、その後継のスキタイ人であったが――

 描写の本質に変わりはなかったろう。

 

 ――遊牧の起源

 を考える時――

 その「遊牧」が、

 ――騎馬

 の発明の以前なのか、以後なのかは――

 踏まえておく必要がある。

 

 『随に――』