英語では、
――That's a good question.
との句が、好んで使われる。
日本語に訳せば、
――それは良い質問だ。
となろう。
ここでいう、
――良い質問
は――
むろん、
――良い問い
に置き換えられる。
つまり、
――良い質問
とは――
概ね、
――新しさ
や、
――答え甲斐
のある問いのことだ――
と、いってよい。
が――
英語圏で、
――それが良い質問だ。
が用いられる場合――
様相は少し違う。
例えば――
――My father was very strict with me. I still do not have good feelings about that.
と零(こぼ)す相手に、
――But, you often talk about your father. Have you noticed that?
と訊くと、
――Oh... That's a good question.
と返されたりする。
日本語に訳せば、
――父は私に厳しかった。今でも、そのことをよく思ってはいない。
――しかし、あなたは、よくお父さんの話をしている。気がついていたか。
――ああ……。それは良い質問だ。
という具合である。
つまり――
思いがけぬことを問われたために、いかに答えたら良いのかが判らぬような時には、
――それは良い質問だ。
と述べることで――
やんわりと返答を拒むのである。
思いがけぬことを問われた――
ということは、
――新しい問い
であったはずだ。
が――
いかに答えたら良いのかが判らぬ――
ということは、
――答え甲斐のある問い
ではなかった――
つまり、
――それは良い質問だ。
の、
――良い質問
は、必ずしも、
――良い問い
ではない――
ということである。
『随に――』