――科学の発想で世界を描く。
とは――
簡単にいえば――
――科学の発想
で示せそうな仮説だけで――
世界を描いて、世界を知ろうとする――
ということである。
これに対し、
――科学の発想で世界を描かぬ。
とは――
簡単にいえば――
――科学の発想
では言及が出来なさそうな概念で――
世界を捉え、世界を語ろうとする――
ということである。
見過ごせぬ点は――
――科学の発想で世界を描かぬ。
の立場であっても――
――科学の発想で世界を描く。
の立場と同様に――
通常は、
――科学の発想
で言及が可能な範囲が十分に意識をされている――
ということだ。
敢えて、
――科学の発想
が及ばぬ領域へ出――
その流儀から自由になることで、
――科学の発想
では不可能な言説を試みる――
というのが、
――科学の発想で世界を描かぬ。
の本質といってよい。
例えば、
――この世界には幽霊が居る。
と見做す時に――
――非霊界の外に在る霊界
とか、
――死後に霊界へ行ける人
とか、
――霊界と非霊界とを自由に行き来し得る幽霊
とかいった概念を用いて――
次のように、
――人は、非霊界に閉じ込められつつ、その外に霊界が在ることを知っているが、実際に霊界へ行けるのは死後のみであるのに対し、幽霊は、霊界と非霊界とを自由に行き来し得ると考えられるで、この世界に幽霊は確かに実在をする。
と語ることは――
少なくとも表面的には、
――科学の発想
が顧みられている。
むしろ、
――科学の発想
と齟齬を来たさぬよう――
注意が払われている。
いいかえるならば――
――科学の発想
に意識的であることで、
――科学の発想
の射程から外れようとする――
ということである。
『随に――』