男女関係には慣性の法則が働く――
ということを――
きのうの『道草日記』で述べました。
男女の仲は――
それを始めるにせよ、終わらせるにせよ、進めるにせよ、退かせるにせよ――
どれをとっても、当事者に精神的な負担が必ずかかる――
よって、男女の仲は、いったん定まったら、それを変えていくことは容易ではない――
ということです。
こう述べると――
交際や結婚を始めただけでなく、終わらせたこともある人なら、たいていは、
――その通りだ。
と同意してくれるのですが――
たまに、
――そんなことはない。
と異論を向けられることがあります。
――私たちの付き合い始めは、とってもスムーズだった。
とか、
――私たちが結婚したときは、そんな負担はかからなかった。
とか――
……
……
つまり――
男女の仲を終わらせたり退かせたりするときはともかく、始めたり進めたりするときには――
慣性の法則など働かないのではないか――
そういうことですね。
……
……
この異論への反論は、
――たしかに、もし恋愛の精神エネルギーを十分に溜めこんでいれば、男女の仲を始めたり進めたりするときには、精神的な負担はかからない。
というものです。
――恋愛の精神エネルギー
というと――
何だか難しい話に感じられますが――
簡単な話です。
――あの人と、もっと仲良くなりたい!
とか、
――この人と、いつも一緒にいたい!
という願望を永らく抱き続けて、それが叶い、晴れて恋人になったり夫婦になったりするのであれば――
精神的な負担は皆無である――
ということです。
――やった~!
という歓喜の情が、あらゆる難事を吹き飛ばします。
恋人になったり夫婦になったりすることに本来ならば要するはずの膨大な精神エネルギーは――
溜めこんだ恋愛の精神エネルギーによって、造作もなく、補填されるのです。
ただし――
……
……
補填のされ方には――
次の2通りがあります。
1) 双方とも、交際ないし結婚に対し、たまたま同じ時期に同じ程度に強い意欲をもつ場合
2) 片方は交際ないし結婚に強い意欲をもたないが、それをもう片方には感じさせない場合
1)の場合は、精神的な負担を抱きうる者がいません。
それまでに双方が溜めこんでいた恋愛の精神エネルギーを十分に解放するだけで――
他に、これいった精神エネルギーを投入することなく、ことは順調に運びます。
2)の場合は、精神的な負担を抱かないのは、交際ないし結婚に強い意欲をもっている方だけです。
もう片方は、必ずといってよいほど、相応の精神的な負担を抱いています。
つまり、相手が巧みに配慮してくれるおかげで――
見かけ上、ことが順調に運ぶように感じられるだけなのです。
……
……
1)の場合は、かなり稀です。
僥倖に感謝するのがよいでしょう。
たいていは――
2)です。
この場合――
その経緯を双方が的確に認識しておかないと――
後年、厄介なトラブルに発展しかねません。
注意が必要です。