マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

後鳥羽上皇のこと(18)

 後鳥羽上皇の『新古今和歌集』への関わり方を――
 きのうの『道草日記』で述べました。

 一言でいうと――
 後鳥羽上皇は、『新古今和歌集』の成立に、並々ならぬ熱意を込めた――
 ということです。

 それは、それとして――

 ……

 ……

 後鳥羽上皇の『新古今和歌集』への関わり方については――
 もう1つ気になる点があります。

 どんな点か――

 ……

 ……

 ――後鳥羽上皇は『新古今和歌集』に編まれた2000首ほどの和歌を全て覚えてしまったらしい。

 という点です。

 その「全て覚えてしまった」というのが、

 ――どの作品を編んで、どの作品を落としたかについて、何となく全て覚えしまった。

 という程度なら――
 とくに異常ではありません。

 が――
 もし、

 ――2000首の和歌の全てを、一字一句、違わずに丸暗記してしまった。

 という程度なら――
 それは異常です。

(もしかして、サヴァン症候群?)
 と思います。

 サヴァン症候群とは――
 19世紀末頃にイギリス人医師によって初めて報告された障害です。

 何らかの発達障害や知的障害を負っているけれども、機械的な記憶力などの特定の能力は抜群に優れている――
 というものです。

 「サヴァン」は「savant」と綴るフランス語で、

 ――賢い人

 という意味だそうです。

 よって――
 もし、本当に2000首の和歌を丸暗記できたのだとすると――
 後鳥羽上皇サヴァン症候群であった可能性が高く――

 ということは――
 何らかの発達障害ないし知的障害を負っていた――
 ということになります。

 おそらくは――
 発達障害のほうでしょう。

 2月15日の『道草日記』で述べたように――
 後鳥羽上皇は、有職故実に長けていました。

 そのことから――
 知的障害は、ちょっと考えにくい――

 ただし、

 ――発達障害

 と一口にいっても――
 さまざまな種類があります。

 後鳥羽上皇で最も考えられるのは――
 今日でいうところの「自閉症」(正確には「自閉症スペクトラム障害」)のうち、言語能力や知的能力が常人に全く劣らないタイプ――むしろ、常人よりも格段に優れているタイプ――です。

 具体的には、

 ――なかなか他人の本音がわからずに、対人関係でトラブルをきたしやすい。

 といった徴候などを呈します。

 自閉症は気分の異常――つまり、軽躁や鬱などをきたしやすい気質――を伴うことがあります。

 その観点からも――
 後鳥羽上皇には自閉症が当てはまりやすいといえます。

 後鳥羽上皇が、大内裏の焼失を機に鬱をきたし、その後に軽躁をきたし、その軽躁の“異常な心理”に駆り立てられるようにして承久の乱を起こした可能性があることは――
 2月25日以降、この『道草日記』で繰り返し述べてきた通りです。