マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

「人を食う」とは?

 ――人を食う

 といういい方があります。

 ふつう、

 ――人を人とも思わないかのような傲慢不遜な態度をとる。

 という意味で使われます。

 これは――
 おそらくは、単に、

 ――傲慢不遜な態度をとる。

 ということとは――
 少し違います。

 ――当人には「人を人とも思わない」という自覚がなく、ふつうに人を人として遇しているつもりなのだけれど、どういうわけか傲慢不遜な態度をとってしまう。

 ということです。

 なぜ、そのような態度を無自覚にとってしまうのでしょうか。

 ……

 ……

 おそらく、

 ――人が好きではないから――

 です。

 そして――
 ひいては、

 ――自分のことが好きではないから――

 です。

 ここでいう「自分のこと」とは――
 きのうの『道草日記』でいったように――
 幅広い意味での「自分のこと」です。

 例えば、

 ――自分の容姿だけ

 とか、

 ――自分の利害関係だけ

 とかいった“「自分のこと」の一部”ではありません。

 少しでも「自分のこと」といえそうなことは――
 すべて当てはまります。

 ……

 ……

 人は――
 ついつい人を人とも思わないように発言をしたり行動をしたりしてしまう存在です。

 そのことに気づくと――
 人は、まず自分のことが嫌いになる――

 が――
 それを通り越すと――
 今度は、自分のことが愛おしく思うようになります。

 ついつい人を人とも思わないように発言をしたり行動をしたりしてしまうのは――
 自分だけではないということに気づくからです。

 そして――
 ついつい人を人とも思わないような発言や行動をしてしまうのを――
 多くの人たちが、様々な工夫を施すことで、どうにか回避しようとしていることにも――

 ……

 ……

 このことに、

 ――人が好き

 という人は気づいています。

 だからこそ――
 人が好きになっているようなところが、あります。

 つまり――
 「人が好き」という人は、

 ――人を食う

 ということを――
 およそ、やりそうにないのです。