――「粋(いき)」の性差を考える場合は、“男性が男性に感じとる「粋」” と “男性が女性に感じとる「粋」” との2つを考えればよく、これら2つの「粋」のうち、“男性が男性に感じとる「粋」” については、“男色の観点から捉えられるべき「粋」” と “女性の主観を介在させる間主観的な「粋」” との2つに分けて考えればよい。
ということを――
きのうの『道草日記』で述べました。
きょうは、
――男性が女性に感じとる「粋」
について考えてみましょう。
11月4日の『道草日記』で述べて以降、
――粋
とは、
――色気の嗜(たしな)み
であると、繰り返し述べてきました。
“男性が女性に感じとる「粋」” についていえば――
この場合の「色気」とは、
――男性が女性から感じる色気
であり、つまりは、通常の男性視点の色気ですから、とくに注意をする必要はありません。
注意を要するのは、「嗜み」のほうです。
“男性が女性に感じとる「粋」” では、客体となる女性の色気の嗜み方が主体となる男性の好みなのです。
つまり、男性が好ましく思うような色気の嗜み方をしている女性に対して男性が感じとる性質――それが、
――男性が女性に感じとる「粋」
の実態といえます。
この場合に、客体となる女性は、当然ながら、ある程度は、主体となる男性に媚びていることになります。
わざわざ男性が好む色気の嗜み方をするのですから、それは、あきらかに男性への迎合といえます。
が――
媚びていることが主体となる男性に伝わってしまうと、もう、それは「粋」ではない――ただの「媚び」です。
つまり――
“男性が女性に感じとる「粋」” というのは――
客体となる女性が、主体となる男性に対し、その「媚び」の意図に気づかれない程度に媚びてみせることで――要するに、男性が好ましく思うように色気を嗜んでみせることで――初めて成り立つ「粋」なのです。
それは、男性の感性と女性の理性――正しくは「悟性」――とが鋭く対立して拮抗する際にのみ生じる性質です。
この意味で、“男性が女性に感じとる「粋」” というのは、
――実に危うく張りつめた性質である。
といえます。