精神医学の発想は判りにくい。
たしかに、そうだ。
が――
これは――
精神医学に限ったことではない。
医学全般にいえることである。
……
……
古来――
医学は、
――異常
に着目をしてきた。
――病
や、
――怪我
の奇異性・変異性に目を奪われ――
その“異常”をいかに“正常”へと近づけていくかに――
汲々とした。
が――
ある時――
医師らは気づく。
――正常を弁えてこそ、異常と向き合える。
と――
――正常に思いを馳せずして、異常を治すことなど、できようか。
と――
……
……
ただ診ているだけでは――
病や怪我を治すことはできせぬ。
病になる前や怪我をする前が、どうなっていたのかを弁えずに――
あれこれと対策を講じても――
益は少ない。
かくして――
身体の“正常”への理解や洞察が――
医学の主要な目的の一つとなる。
――ただ治せばよいのではない。なぜ、治るのか――
その必然を知る必要があるのだ、と――
そして――
それを知るには――
病になる前を知らねばならぬ――
怪我をする前を知らねばならぬ――
……
……
『随に――』