現代の精神医療の治療方針に――
12月27日の『道草日記』で述べた、
――“病的な体験”は“神経単位(neuron)”の異常な“配線”で起こる正常な“演算”ではないか。
という考え方に照らしてみると――
それまでにみえていなかったことが色々とみえてくるようになります。
ここでいう、
――病的な体験
とは、
――聴こえるはずのない声や音を聴いたり、事実や論理に明らかに反する確信を抱いたりすること
です。
また、
――神経単位
とは、
――その神経系の持ち主によって「1つ」と主観的に認識をされうる体験の発生に関わる全ての神経細胞の集合
であり、
――演算
とは、
――“神経単位”を担う神経細胞の集合の活動
であり、
――配線
とは、
――“神経単位”を担う神経細胞の集合の形成
であるのです。
要するに――
現代の精神医療が行っていることは、
――異常をきたした“配線”で起こっている正常な“演算”を薬物によって抑え込むことで、異常をきたした“配線”の自然治癒を促すこと
といえます。
――正常な“演算”を薬物によって抑え込むことによって――
というところが特徴的です。
正常な“演算”を抑え込んでいるのですから――
それは、明らかに異常な“演算”なのです。
が――
あえて“演算”を異常に抑え込むことで、異常をきたした“配線”が“神経単位”にかけうる過剰な負荷を軽くする結果、異常をきたした“配線”が自発的に直っていく――
そういう期待が、現代の精神医療にはこめられていた――
そういう話になります。
よって――
現代の精神医療の治療方針は、実は、
――配線
という概念を抜きには語れないものであった――
ということになるのです。
おそらく、
――心の病気
の本態は、
――“配線”の乱れ
です。
現代の精神医療の究極の目標は、
――“配線”の乱れを直す。
でしょう。
が――
その目標は、今のところ、
――叶わぬ夢
です。
現代の自然科学・医学の技術では、“神経細胞”の単離も、その“配線”の解明も、
――夢のまた夢
であるからです。
よって――
現代の精神医療の現実的な目標を挙げるとしたら――
それは、
――“配線”の乱れをできるだけ減らす。
となります。