――脳の神経模様
の振る舞いを一定の期間、詳細に観ることで、
――脳の細胞基板
の細かな造りを精確に推し量ることができる――
と考えられる。
が――
ここで忘れられぬことが一つある。
それは、
――脳の細胞基板
には、
――“体の知覚体験”の痕跡
と、
――“脳の自発変化”の軌跡
との“掛け合わせ”が記録をされていて――
それらのうち、
――“脳の自発変化”の軌跡
の方は、
――脳の自発変化
が全くの無作為であると考えられることから――
殆ど予測ができぬ“軌跡”であるに違いない――
ということだ。
殆ど予測ができぬ“軌跡”であれば――
当然のことながら――
その“軌跡”を逆向きに辿る時も――
殆ど予測はできぬ。
つまり――
逆向きに最後まで――いいかえれば、「出生時まで」――辿らねば――
――“脳の自発変化”の軌跡
の全容を掴むことはできず――
ひいては、
――脳の細胞基板
の細かな造りを精確に推し量ることもできぬ――
ということである。
このことは――
精神医療の経験則と――
不思議に合致をする。
精神医療の現場では、通常――
医師は、患者の生活史の全てを訊き出す。
――出生時から現在までの全てを――
である。
そうせねば――
診断を間違えやすくするからである。
『随に――』