物語を味わう上で欠かせないステップに、補完的解釈があると思っています。
補完的解釈とは――
例えば、主要登場人物とみていた人物が唐突に死んでしまったときに、
――なんで簡単に殺すかなぁ。もっと引っ張ればいいのに!
などと思ったりせず、
――なんで、この人物は死に急いでしまったのだろう? 死に急ぐ理由は、なんだったのだろう?
と考える――そういうことです。
もちろん、作者が手練なら、そのような唐突な死は描かれない――
しかし、作者は皆が皆、手練というわけではありません。
これから手練になっていくかもしれない人で、まだまだ未熟な人はいる――
才能はあるのに、結果が伴っていない人もいる。
そういう人たちの紡ぐ物語を正当に評価するためには、補完的解釈の技量が備わっていなければならないと思うのです。
物語の粗探しは何も生み出しはしないのですね。
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絵本を読んでいました。
猫の親子の物語です。
子猫は母猫と喧嘩をし、家を飛び出します。
しばらく家に帰ろうとしないのですが、色々と良いことが重なって機嫌がよくなり、あるとき、お土産をもって母猫の下に帰ろうとする――その途中、母猫の亡骸に出会うのです。
母猫が死んだ理由は、ほとんど描かれていません。
――子猫の行方を探しているうちに悪者に襲われた。
といった程度の描写しかないのです。
いかにも唐突な死です。
こうした場面に遭遇し、
――ちゃんと母猫の死を説明しなきゃ!
といっても、意義は薄いと思うのです。
母猫が死に急いだ理由を補完的に解釈するほうが、より意義深いと思うのです。