マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

アドバイスはギャンブル

 自分より若い人をみかけると、つい助言したくなるのです。
 余計なお世話なのは、わかっているのですが――

 なぜでしょう。

 とにかくスリリングなのですよね。
 アドバイスすること自体が――

     *

 若い人に助言したがるのは、僕だけのことではないようです。

 例えば、大学の研究室などでは、ベテランの研究者が駆け出しの研究者を捕まえ、ああでもない、こうでもないと教示する光景は、ありふれています。
 少なくとも学界では、

 ――年配者は若者に親切にしたがる。

 という傾向があるようです。

 なぜでしょうか。

     *

 ――若さとは資源である。

 という考え方があります。
 これによれば、

 ――若者は、より多くの資源を持っている。

 ということになります。
 年配者が若者に親切にすることは、例えば、金融業者が資産家に親切にすることに似ているかもしれません。

 資産家にとって有益でない金融業者は淘汰されていきます。
 それと同じように、若者にとって有益でない年配者も淘汰されていくでしょう。

 若者に何を助言するか――
 そこに年配者の全ての価値観が凝縮されるのではないでしょうか。

 少なくとも金融業者なみのリスクは背負っているはずなのです。

     *

 5年、10年前の自分の過去を振り返るとき――
 思い当たることがあります。

 当時、僕は専ら助言を受けるほうでした。

 思いあたることというのは、全ての価値観を賭(と)して助言していた人と、そうでない人との差です。

 実に大きいのですね。
 雲泥の差です。

 もちろん――
 どちらの助言が心に響いたかは、いうまでもありません。

 僕が助言するときも、そうでありたいと思っています。
 自分の全ての価値観を賭したい、と――

 だから、スリリングなのでしょうね。

 僕にとって、若い人へのアドバイスにはギャンブルの様相が含まれるのです。