マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

実は美少女だった

 妹は2歳年下である。
 先年、嫁ぎ、今は一児を成している。

 兄のことは、

 ――いかにもアキバ系――

 と蔑んでいるらしい。

 母から聞いたので、間違いあるまい。

 とくに反論はせぬ。

 物書きたるもの、多かれ少なかれオタク的な要素がなければ、やってはいけぬ。
 そこがアキバ系に通じたとしても、驚くにはあたらぬ。

 とはいえ――
 釈然としないところもあった。

(失礼なヤツめ!)
 と思った。

 それが――
 昨日、消えた。

     *

 実家で本棚を整理していたら――
 妹のアルバムが出てきた。

 15、6年前のもの――
 妹が、まだ10代だった頃のものである。

 初めて目にする写真ばかりだった。

 みているうちに、気がついた。

 ――実は美少女だったのね。

 と――

 中高年に好かれそうなタイプである。
 同世代には敬遠されるタイプだ。

(どうりで――)
 と、納得した。

 妹は父に溺愛されていた節がある。

     *

 そういえば――
 かつて妹が使っていた部屋の周辺からは、ファッション誌の類が山のように出てきた。

 もしかしたら――
 案外、真剣に美少女を演じていたのではなかったか――

 本人は否定するだろうが――

     *

「美少女」といっても――
 アイドルとかアニメとかとは無縁の――非アキバ系である。

 だから、
(仕方ねえや)
 と思った。

 ああいう少女だった女に「アキバ系」と蔑まれるのは、ごく自然なことだと思う。

     *

 でもな、妹よ――
 口の利き方や物の考え方は、全く美少女ではなかったぞ。

 だから、兄貴は昨日まで気づかなかったんだ。