眠いときは、ロクな判断が下せぬ。
ロクなことを喋らぬし、ロクなことを考えぬ。
ロクに動けぬ。
僕は不休不眠には強いほうなのだが――
さすがに、20時間も寝ないでいると、眠くはなる。
この眠気は、よほどの緊張感がない限り、マイナスに働く。
が――
プラスに働くことも、ないではないようだ。
*
子供の頃――
とある歴史物小説をよんでいて、こういうシーンに出くわした。
密偵が大戦(おおいくさ)を控え、不休不眠で働いていた。
その密偵にむかって、主君が、
――寝ずともよいのか?
と問う。それに対し、密偵は答えた。
――こういうときは、むしろ寝ないほうが良いものでござりまする。
と――
大戦に臨むくらいの緊張があれば、眠気は、かえってプラスに働くかもしれぬ。
感情が適度に鈍化し、余計なことを考えぬかもしれぬ。
討ち死にするときは、ジタバタせぬかもしれぬ。