女性のスポーツ選手で、そのまま女優として通用しそうな人が、たまにいる。
(天は二物を与えたか――)
と嘆息するばかりである。
が――
一つ注意せねばならぬ。
*
僕が18歳の春に興味をもった女の子は、愛らしく美しかった。
僕と同い年で、顔立が中性的で、年齢よりも若くみえた。
顔立は、当時、某競技で彗星のごとく現れた女子選手に似ていた。
やはり、美しく愛らしかった。
こういうとき、僕はペラペラと余計なことを喋る。
当時の僕も、そうだった。
僕はペラペラと喋った。
――あの娘(こ)って、あの女子選手に似てるよね。
と――
当時の僕にとっては最大級の賛辞だったのが――
それは、全く理解されなかった。
女優として通用しそうであっても――
スポーツ選手であることに変わりはない。
女優として通用しそうであっても――
実際に女優として通用しているわけではない。
その女子選手がメディアに露出しているのは、その卓越した競技実績によるものであり、その愛らしい容姿によるものではなかった。
――あの女子選手に似てるよね。
と本人に直接、伝えたわけではない。
友人たちに伝えた。
が――
じきに本人に伝わった。
――それって、褒め言葉かぁ?
が、第一声だったそうである。
僕は落ち込んだ。
今なら、わかる。
彼女の発言は、至極、真っ当だった。