マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

迷惑オジさんは健気オジさん

 僕の自宅の近くを――
 片側3車線の大通りが走っている。

 その大通りを――
 スタコラサッサと走っている迷惑オジさんがいた。
 今夕のことである。

 あまりにも奇妙な光景に――
 僕は思わず足を止めた。

 迷惑オジさんは、

 ――いや~、すまんね~、みんなに迷惑かけて~

 みたいな風情で笑っている。
 折からの大雨にも傘はささず、さも楽しそうにニコニコと笑いながら、通勤帰りのマイカーに囲まれるようにして走っていた。

 片側3車線の大通りを、生身の人間が、スタコラサッサと走っていれば、車にとってはハタ迷惑であること、限りない。

(何やってんだ、あのオッサン――)
 と、正直、腹立たしく思った。

 が、よくみると――
 迷惑オジさんは、バスの後ろを走っている。
 そのバスに乗客はなく、前後のハザード・ランプが点滅しており、前の扉は開けっ放しで、こころなしか車体が傾いていた。
 バスの前方には、これまた別のオジさんが、バスを先導するようにして走っている。

 それでわかった。

 スタコラサッサと走っていた迷惑オジさんは、うまく走れなくなってしまったバスの後ろで交通整理をしながら、ゆっくりとバスのあとを追いかけていたのだ。

 バスが故障したらしい。

 さも楽しそうにニコニコと笑っていたのは、

 ――もう笑うしかないね~

 といった心境だったのだろう。

 何しろ――
 近年、まれにみる豪雨の最中である。

 片側3車線の大通りを生身で走っていた迷惑オジさんは――
 故障したバスを後片付けしていた健気オジさんであった。