プロ野球選手の流出が止まらぬ。
イチロー選手や松井選手の例は、いうに及ばず――
今年は新たに松坂投手や岩村選手などが、アメリカの大リーグ(メジャー)に流出する。
日本のファンとしては面白くない。
野茂投手が渡米した10年前とは、時代が変わっている。
日本の有力選手がメジャーで通用することは、今や自明となった。
そうした状況での流出は、
――日本球界への背信行為――
である。
少なくとも、幼い頃から日本球界をみて育った僕にとっては、全く不愉快な話である。
もちろん――
これを歓迎する人々がいることも知っている。
日本の有力選手がメジャーで活躍することは――
日本球界のレベルが、メジャーに比肩しうることを意味する。
あの垢抜けなかった20年以上前の状況を知る人々にとっては、まさに隔世の感がある。
それは僕にもわかる。
が、起こっていることは、単なる流出だ。才能の流出である。
貴重な才能が流出し、日本球界が痩せ細っている。
有力な選手が残り、そうとはいえぬ選手が流出するのではない限り――
これは、日本球界の将来の衰退を意味する。
メジャーに比肩しうる日本球界が、次に目指すべきは――
世界最強球界への道であろう。
メジャーの有力選手が好んで来日するような――
そういう球界に脱皮することだ。
なぜ、メジャーの有力選手は来日せぬのか――
簡単である。
日本でプレーをする魅力がないからだ。
日本球界がメジャーに最も劣っている点は選手のプレー環境だといわれる。
怪我をしにくい球場――身体管理に適した設備――
そうしたプレー環境に惹かれ、メジャーに世界の才能が集う。
だから、メジャーのプレー環境は、一層、魅力的となる。
日本の有力選手が、日本のファンを袖にしてでも渡米するのは、そうしたことによる。
選手は責められぬ。
限りある選手生命だ。
己の体の自由が利くうちに、より優れたプレー環境を求めて渡米することは、自然なことである。
病根は、優れたプレー環境を用意できぬ側にある。
球団経営者の責任だ。
ソロバン勘定に汲々となるのではなく、野球を心から愛するようであってほしい。
同時に――
ファンの側にも責任はある。
球場に足を運び、入場料を払ってこそ――日本球界は隆盛する。
日本のファンは、これまで、そうしたことに熱心ではなかった。
そのツケが回ってきていると、いえなくもない。