マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

小説を書くのに適した精神状態

 小説を書くのに適した精神状態というのがある。

 どちらかというと――
 餓(かつ)えた状態が望ましい。

 精神が餓えた状態である。

 欲求が満たされえない状態――
 些細な不運に見舞われた状態――
 あらゆる決断が裏目に出る状態――

 要するに、
(なんだよ、ちくしょう!)
 というような精神状態である。

 こういうときは――
 どうしても、心が内向きになる。

 意識が内向するので、物語が心の泉から湧き出るのには適している。

 しかし――

     *

 作家は小説を書いているときには成長をしない、という。

 小説を書くのに適した精神状態というのが、そういうものなら――
 当然のことかもしれない。