大学に入る1、2年前のこと――
当時30代くらいに男性から、
――人間というのは、どうにも接しにくい。
という話をきき――
どうしようもなく憂鬱な気分になったことがある。
――例えば、会社などで、休憩中にお茶を入れてくれたOLに、たまたま何かの拍子で御礼をいい忘れただけで、その後は、敵意を露骨に剥き出しされる、ということがある。
という。
当時の僕が憂鬱になったのは、
(ああ、たしかに、そうかもな)
と思ったからである。
その一方で――
当時、まだ二十歳前だった身としては、
(いい歳した大人が、まさか、そんなバカなことを――)
などと思ったりしたことも、また事実である。
が、その後、自分も30代になってわかったことには、
――いい歳した大人でも、そんなバカなことをすることが、結構、頻繁にある。
というのが真理であって――
だから、
――人間というのは、どうにも接しにくい。
という嘆息に至ってしまうわけであるが――
そうはいっても――
やはり――
どうにか、ならないものであろうか。
こうした諍(いさか)いは、おそらく、個人の価値観の差異が引き金になっている。
個人の価値観を統一させることなどは、原理的に不可能であるから――
予防の手段は、ないといってよい。
やはり、
――どうにもならない。
というのが、結論か。