11月3日は父の命日である。
今年は七回忌にあたった。
6年前に葬儀を執り行ったお寺で――
七回忌の法要を営んだ。
*
朝、空を見上げると――
雲一つない青空であった。
十代の頃は、
(あの空の彼方に何があるのか?)
と考えていた。
三十代の今は考えない。
(あの空の彼方には何もない)
と考えている。
いや――
正確には、
(あの空の彼方に思いを馳せる自分の心の中にこそ、何かがある)
と考えている。
それで――
昨日、目にしたばかりの髄筆を、思い出した。
その著者は、とある優れた風景画に感銘を受け、
――こんな風景を、いつか自分も、この目でみてみたい。
と思った。
その次にとった行動は、その風景画のモデルとなったとみられる土地を探し訪ねることであった。
(そうではあるまい)
と、僕は思った。
もし、そのような風景を真にみたいと思うなら――
自宅の近所を出歩けば良いではないか、と――
変わるべきは客体の風景ではなく――
主体の心象であるはずだ、と――
僕らがみているものは――
常に僕らの心である。