マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

思い出せない

 人は、一人で生まれて一人で死んでいく。

 そのことを忘れるとき――
 人生は味気ないものに感じられる。

 ちょっとしたスレ違いを恨めしく思ったりする。

 目の前に溢れている幸せに気づけなかったりする。

 一人に還るのは簡単だ。

 誰しも最初は一人であった。
 そして、最期も一人である。

     *

 父と最後に過ごした年越しのことが――
 思い出せないでいる。

 6年前の11月に、父は死んだ。

 だから――
 その年の年越しを父と過ごすことはかなわなかった。

 では――
 その前の年の年越しは、どうであったか。

 思い出すことができない。
 できそうにない。

 何をしていたのか。

 たぶん、父の傍に戻っていたとは思うのだが――

 なぜならば――
 次の年の同じ頃には、もう、父はいないと思っていたので――

 それにもかかわらず――
 思い出せない。

 父と最後に過ごした年越しのことが――
 思い出せない。

 このことは、苦い悔やみ事となって――
 この先も、僕の人生の節目で思い出されるに違いない。