僕は「アニメ」という言葉が、あまり好きではないのですよね。
「アニメーション」という言葉のほうが、断然、好きなのです。
ですから――
しばしば「アニメーション」という言葉を「アニメ」の意味で用います。
では――
「アニメ」と「アニメーション」とでは、何が違うのか?
「アニメ」は、単なる「アニメーション」の略語ではないのか?
もちろん、明確な基準があるわけではないと思いますが――
例えば、『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社、2003年)の著書のある藤津亮太さんは、次のように使い分けておられるようです。
――日本の商業アニメーションのメインストリームである「アニメ」と、コマ撮りなどを使った映画芸術の総称「アニメーション」は、文意に応じて使い分けるべきだが――
つまり、「アニメ」は、
――日本の創作産業の柱としてのアニメーション
であり、「アニメーション」は
――アニメーション技術を用いて撮られた映画芸術
である、ということのようです。
が――
この説明からもわかるように、「アニメ」にせよ「アニメーション」にせよ、どちらの言葉を説明するにしても、「アニメーション」という言葉が顔を出してくるのです。
当然ですよ。
だって、「アニメ」は元は「アニメーション」の略語だったのですから――
こうした現状をみると――
たとえ文脈に支持される語意に従うにしても、「アニメ」と「アニメーション」とを使い分ける意義は、ほとんどないように、僕には思われます。
事実、藤津さんご自身も、『「アニメ評論家」宣言』の中で、2つの言葉を必ずしも万全に使い分けることができなかったことを、告白されています。
「アニメ」も「アニメーション」も、ともに同じ語意をもっているとみなすのが自然でしょう。
違うのは語感なのです。
「アニメ」がカジュアルで「アニメーション」がフォーマルだ、というだけのことです。
2つの言葉が違う語意をもっているように思われるのは――
「アニメ」ないし「アニメーション」が非常に幅広い語意をもつことの証左にすぎません。