マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

すぐれた文学研究は

 僕は文学と文芸とを分けて考えることにしております。

 文芸とは主に文章から成る芸術のことであり――
 文学とは文芸を対象とする学問のことです。

 簡単にいえば、以上のようになるのですが――
 もう少し詳しくいうと、以下のようになります。

 学問というものは――
 世の事物にまつわる様々な現象を観察し、吟味し、それら現象の背景に潜む原理や法則を導き出して定式化する営みです。

 ということは――
 文学が対象とするのは、文芸作品それ自体ではなく、それら作品を生み出す人たちや、その人たちを取り巻く環境であって――
 それら人たちや環境の織り成す諸現象の背景に、何らかの原理や法則を見出す営みこそが、文学である――
 ということになります。

 文学作品それ自体は、

 ――現象

 ではありません。
 単なる事物です。
 それだけでは、ちょっと学問の対象になるとは思えません。

 文学作品が、しかるべき環境において、しかるべき人たちによって生み出されること――
 そうした現象を扱う営みが文学です。

 すぐれた文学研究は、事物ではなく現象を捉えております。